加工食品だらけのこの世界で、無理なく健康的な食生活を送るには

「健康的な食事」と言われたら、どんなものを思い浮かべますか? まずは、野菜をたっぷり。お肉や卵は、放し飼いでのびのび育てたものを。もちろん、自宅でイチから調理して...。でも、あなたはこの1週間で、そんな感じの食事を何回しましたか? ほぼゼロですって? 大丈夫、皆さん似たり寄ったりです。

私たちの生きる社会は、加工食品に満ち溢れていて、これはもうどうしようもありません。ライターとしては、自分のことを棚に上げて、加工食品を避けるべき、なんて記事を書くのは簡単です。「自然の状態に少しでも近い食べ物が一番。アップルパイより、生のリンゴですよ!」なんてね。けれども本当は、「加工」された食品だからといって、それだけで確実に身体に悪い、なんてことはありません。加工と一口に言ってもいろいろですしね。ですから、加工食品に罪悪感を抱くのをやめ、ときどきは加工食品も食べている、と認めてもいいと思うのです。加工食品がそれほどの悪者ではないことを、以下でご説明していきましょう。

食品がどれだけ加工されているか、いちいち気にしすぎない


いきなり厄介な問題ですが、加工食品とは何か、定義しなくてはなりません。ドリトスは? 加工食品。これは簡単ですよね。泥つきの生のジャガイモは、加工食品ではない。ここまではOKです。

でもそのジャガイモをそれから、洗って、茹でて、たぶん皮もむきますよね。それからたとえば、バターをのせて、ニンニクも添えて...あ、やっぱりバター足りなかった、ニンニクももう少し、なんてことになったら? それってある意味、「加工」ではありませんか? 

「でも、そこまで高度な加工じゃないし」と思うのではないでしょうか。そう、食品が加工されているかどうかというのは、程度の問題なのです。「畑から掘ってたジャガイモを自宅のキッチンで茹でる」程度のことなら、問題のない加工と言えるでしょう。

どこまでが問題のない加工で、どこからがダメか、線引きしようとすると難しくなります。牛を屠殺してステーキにするのは? 野菜を冷凍するのは? 缶詰の豆は? 地元のパン屋さんのパンは? 工場で量産されるパンは? OKな順に並べ替えるとしたら、どうしますか?

これが簡単な問題でないことがよくわかる文章があります。ライターのMegan Kimble氏が、加工食品なしで1年暮らしてみた体験記を、ダイエット情報の『Shape』誌に書いているのですが、そこにはこんな一節があります。

    この1年を加工食品なしで生活するに当たって、「理論上、自宅の台所で作れるはずのもの」は、加工食品とはみなさないことにしました。(中略)グラニュー糖を自力で作ろうと思ったら、遠心分離機にかけて、漂白して、湿気て固まらないように添加物を足して...、といった工程が必要ですが、蜂蜜ならば、ミツバチが巣の中で吐き戻した花の蜜を採集する方法さえわかれば手に入ります。実際にはやりませんでしたが、理論上はビールを醸造することもできたはず。炭酸のジュースは諦めましたが、シュワシュワしたものが好きなので、「SodaStream」という家庭用の炭酸水メーカーを買いました。

確かに、砂糖を精製するには、蜂の巣から蜂蜜を採集する場合よりも、さまざまな工程と機械が必要になります。でもそれって、「蜂蜜と砂糖のどちらが身体に良いか」とは、もう別の話ですよね。実は蜂蜜も砂糖も、栄養価に大差はないのです。それに、炭酸のジュースで特に問題なのは、風味づけのシロップに含まれるさまざまな成分であって、自宅で作ったかどうかは関係ありません。Kimble氏はSodaStreamでノンカロリーの炭酸水しか作らなかったようですが、実はメーカーが公式に販売しているシロップを使えば、同じ機械でペプシコーラだって作れてしまうのです。

「加工食品は悪!」思考を極端に突き詰めてしまうと、実際には悪くないものまで、いくつも排除してしまうことになりかねません。冷凍の野菜は生のものと同様に健康的だし、冷凍のほうが栄養価が高い場合もあります。牧場でのびのび育った牛から牛乳を搾ったって、流通の前には加工されてしまいますが、それにはちゃんと理由があるのです。栄養学的には、瓶詰めのパスタソースや、できあいのローストチキンを避けなくてはならない明白な理由はありません。アメリカでは卵白だけを牛乳みたいにパック詰めしたものが売られていますが、それだって問題ありません。

「でも、それって加工食品の中でも健康的なものに限った話でしょ? トゥインキーはどうなの? ドリトスマクドナルドやハングリーマンは?」そんな反論が聞こえてきそうです。

自分にとっての「これだけはダメ」を決めて、残りは許容する

上に名前を挙げたようなジャンクフードを避けている人は、きっと何か理由があるのでしょう。糖類や「化学物質」がたくさん含まれているからとか(化学物質については、記事の後半で触れます)、個包装あたりのカロリーが高いとか、脂質が多いとか。しかし、高度に加工された食品は一切口にしないと決めつける前に、ちょっと時間をとって考えてみましょう。あなたの健康上の目標に照らして、本当に避けるべきなのは何ですか?

加工食品の問題としてよく挙げられるものを以下にまとめ、それぞれにどう対応すれば良いかを書き出してみました。

    加工食品には、糖類が多く含まれる:それが身体に良くないのは、割とはっきりしています。チョコバーやカップケーキは言うにおよばず、パンやパスタソースのような、身体に悪くなさそうな食品にだって、糖類は含まれます。とは言え、ラベルを注意深く読めば、摂取を避けるのは簡単です。アメリカでは、栄養成分表示に糖類の項目を設けることが義務づけられています(日本では「炭水化物」の総量の表示が義務で、それを「糖質」「食物繊維」に分けるのは任意です)。今のところは、ラベルの「糖類」の項目を確認するしかありませんが、アメリカ食品医薬品局(FDA)は現在、その下位区分として「添加糖類」の項目を新たに設けようとしています。

    塩分が多く含まれる:これはほとんどの加工食品に当てはまります。私たちが食生活で摂取する塩分の大部分は、高度に加工された食品に由来していて、調理中や盛りつけ後に加える塩分の量を上回ります。特に塩分が多く含まれるのは、加工肉や外食です。どういうわけか、私のまわりには「炭酸のジュース(soda)には塩分(sodium)が大量に含まれている」と信じている人が多いのですが、これは事実に反します。塩分の含有量が知りたければ、ラベルの栄養成分表示の「ナトリウム」の項目を読めばわかります。けれども、食塩感受性高血圧の人でもないかぎり、塩分はそこまで身体に悪いものでもありません。

    脂質が多く含まれる:脂っこいスナック菓子や揚げ物、外食メニューの大部分は、確かにその通りです。でも、脂質は必ずしも悪いものではありません。満腹感が得られるし、おそらく糖類に比べれば身体への悪影響は少ないと考えられています。アメリカでは「脂質」も栄養成分表示への記載が義務づけられていて、下位区分として「飽和脂肪酸」「トランス脂肪酸」の内訳を示すことになっています(日本では「トランス脂肪酸」は任意表示)。飽和脂肪酸は身体に悪くないとされていますが、トランス脂肪酸はあらゆる観点から問題視されています。とは言え、アメリカでは、今や加工食品からもトランス脂肪酸の追放が急速に進んでいます。

    食後に眠気を誘う:加工食品の中でも、白砂糖や精白小麦粉など、精製された炭水化物を多く含むものに当てはまります。たとえば、トゥイズラーとかプレッツェルなどですね。でも、ポテトチップスみたいに脂質も多く含むものなら、それらのおかげで消化がゆっくりになるので、少しは眠気が起きにくくなります。

    中毒性がある:これについてはたぶん、ラベルを見てもわかりません。メーカーはお金を儲けたいので、購入者がリピーターになってくれるよう、いろいろな手を使います。袋を開けたらすぐ食べられるスナック菓子やチョコバーには、悪魔の仕業かと思うほど、よく考えて作られているものがあります。脂質たっぷり、糖類たっぷりの合わせ技は基本で、たいていは塩分もそれなりの量が加えられています。これに当てはまる商品名は、すぐにいくつも思い浮かべられると思います。要するに、自宅のゴミ箱にいつも空き袋が捨ててある、あの商品の名前を挙げれば良いのですから。

    「化学物質」が多く含まれる:当たり前です。あらゆるものは化学物質でできています。たとえば、バナナはこれだけの「化学物質」でできています。確かに、一部の加工食品は原材料のリストがやたらに長くて、その中には舌を噛みそうな長たらしい名前のものもたくさん含まれていますが、名前が小難しいからといってその成分が危険だということにはなりません。保存料として使われることの多い「アスコルビン酸」や「トコフェロール」は、ラベルで名前を見ても実態がよくわからないかもしれませんが、それぞれ「ビタミンC」と「ビタミンE」を専門的に言い表したものにすぎません。どちらも抗酸化作用があって、あなたの身体にとっても、食品の保存のためにも有益なのです。着色料、調味料、保存料などは、必ずしもすべてが悪いものというわけではありません。かつて論争を引き起こした成分も、そのほとんどはおそらく安全だと考えられています。「それでも、注意したほうが良い成分はあるでしょ?」と気になる方は、米NPOの公益科学センター(CSPI)による、こちらのリストをどうぞ。

    地域経済や環境に悪影響がある:自分の応援したい生産者から食品を買うことを、英語圏では「フォークで投票する(vote with your fork)」と言います。大企業の製品は買いたくない、チェーン店よりも地元のパン屋さんにお金を落としたいと思うなら、その姿勢を貫きましょう。また別の立場として、加工食品はポリ袋やビニールで過剰包装されているからとか、原材料の仕入れから工場での生産、小売店への配送までの各段階で相当の二酸化炭素を排出しているからといった理由で、環境に優しくないと考える人もいます。どういう立場であれ、ここは分けて考えたほうが良いでしょう。作り手が利益ばかり追求していようが、資源をムダ遣いしていようが、できあがった食品が絶対に身体に悪いということにはなりません。

こうしたことを踏まえて初めて、食料品店で買い物をする際に(ファストフードのメニューを選ぶときに、かもしれませんが)、避けたほうが良い商品があるとしたら何か、をしっかり考えられるようになります。糖類を控えているのなら、甘味料としてアガベシロップを使った、見るからに健康的なフルーツジュースを選ぶしかないけれど、豚皮の揚げ物はスナック代わりにいくら食べてもOK、という選択もできるわけです。ああいうのが好きならば、ですけどね。

難しい選択に備える

こうして作戦の大枠が決まれば、あとはどう実践していくかを考えるだけです。たとえば、ときどきこんな状況になりませんか? 仕事中にお腹が空いて、手近で食べ物を調達するにはスナック菓子の自販機しかない。以前なら、自販機の中のものは何もかも身体に悪いと決めつけて食べるのを我慢していたかもしれません。あるいは観念してスニッカーズに手を出してしまって、罪悪感に苛まれるとか。でもこれからは、自販機の商品のどれを買うかを決める指針ができたわけです。

たとえば糖類を控えている人なら、自販機のお菓子ではミックスナッツなどが良い選択ということになります。脂質の含有量は多いですけどね。同様に、ガソリンスタンドで売られている軽食から選ぶなら、クラッカーとハムやチーズがセットになったランチャブルズは、高度に加工された食品ではあるけれど、タンパク質が摂取できるぶん、食後の眠気を誘発しにくいので、ポップターツよりはマシ、ということになります。

もちろん、加工食品なんて一切買う必要のない食生活がベストには違いありません。だからって、すべての食事をイチから自炊できる人なんて、どれだけいるでしょうか? そんなわけで、この記事で取り上げた「加工食品の中でも割と健康的なもの」が役に立つのです。たとえば、できあいのローストチキンとか。冷凍のミートボールと瓶詰めのパスタソースがあれば、あっという間にスパゲッティが晩ご飯にできるし、余ったぶんは明日のランチになりますよね。

毎回の食事をイチから自炊できるのなら、それは素晴らしいことです。食材の生産過程だって、気にしたほうが良いのでしょう。でも、みんながみんな、そんな時間の余裕があるわけではありません。もちろん、人類の歴史を振り返れば、そうしていた時代もありました。主婦や農夫にとって、それは仕事の一部でした。でも今や、食事をイチから自炊するというのは、むしろ趣味の領域です。そうできるのなら素敵だけれど、「誰もがしなくてはならないこと」ではありません。私たちは加工食品の満ち溢れた世界に生きています。注意深くよく考えたうえでその恩恵を受けるのは、決して悪いことではないのです。
Beth Skwarecki(原文/訳:江藤千夏/ガリレオ)