加工食品だらけのこの世界で、無理なく健康的な食生活を送るには

「健康的な食事」と言われたら、どんなものを思い浮かべますか? まずは、野菜をたっぷり。お肉や卵は、放し飼いでのびのび育てたものを。もちろん、自宅でイチから調理して...。でも、あなたはこの1週間で、そんな感じの食事を何回しましたか? ほぼゼロですって? 大丈夫、皆さん似たり寄ったりです。

私たちの生きる社会は、加工食品に満ち溢れていて、これはもうどうしようもありません。ライターとしては、自分のことを棚に上げて、加工食品を避けるべき、なんて記事を書くのは簡単です。「自然の状態に少しでも近い食べ物が一番。アップルパイより、生のリンゴですよ!」なんてね。けれども本当は、「加工」された食品だからといって、それだけで確実に身体に悪い、なんてことはありません。加工と一口に言ってもいろいろですしね。ですから、加工食品に罪悪感を抱くのをやめ、ときどきは加工食品も食べている、と認めてもいいと思うのです。加工食品がそれほどの悪者ではないことを、以下でご説明していきましょう。

食品がどれだけ加工されているか、いちいち気にしすぎない


いきなり厄介な問題ですが、加工食品とは何か、定義しなくてはなりません。ドリトスは? 加工食品。これは簡単ですよね。泥つきの生のジャガイモは、加工食品ではない。ここまではOKです。

でもそのジャガイモをそれから、洗って、茹でて、たぶん皮もむきますよね。それからたとえば、バターをのせて、ニンニクも添えて...あ、やっぱりバター足りなかった、ニンニクももう少し、なんてことになったら? それってある意味、「加工」ではありませんか? 

「でも、そこまで高度な加工じゃないし」と思うのではないでしょうか。そう、食品が加工されているかどうかというのは、程度の問題なのです。「畑から掘ってたジャガイモを自宅のキッチンで茹でる」程度のことなら、問題のない加工と言えるでしょう。

どこまでが問題のない加工で、どこからがダメか、線引きしようとすると難しくなります。牛を屠殺してステーキにするのは? 野菜を冷凍するのは? 缶詰の豆は? 地元のパン屋さんのパンは? 工場で量産されるパンは? OKな順に並べ替えるとしたら、どうしますか?

これが簡単な問題でないことがよくわかる文章があります。ライターのMegan Kimble氏が、加工食品なしで1年暮らしてみた体験記を、ダイエット情報の『Shape』誌に書いているのですが、そこにはこんな一節があります。

    この1年を加工食品なしで生活するに当たって、「理論上、自宅の台所で作れるはずのもの」は、加工食品とはみなさないことにしました。(中略)グラニュー糖を自力で作ろうと思ったら、遠心分離機にかけて、漂白して、湿気て固まらないように添加物を足して...、といった工程が必要ですが、蜂蜜ならば、ミツバチが巣の中で吐き戻した花の蜜を採集する方法さえわかれば手に入ります。実際にはやりませんでしたが、理論上はビールを醸造することもできたはず。炭酸のジュースは諦めましたが、シュワシュワしたものが好きなので、「SodaStream」という家庭用の炭酸水メーカーを買いました。

確かに、砂糖を精製するには、蜂の巣から蜂蜜を採集する場合よりも、さまざまな工程と機械が必要になります。でもそれって、「蜂蜜と砂糖のどちらが身体に良いか」とは、もう別の話ですよね。実は蜂蜜も砂糖も、栄養価に大差はないのです。それに、炭酸のジュースで特に問題なのは、風味づけのシロップに含まれるさまざまな成分であって、自宅で作ったかどうかは関係ありません。Kimble氏はSodaStreamでノンカロリーの炭酸水しか作らなかったようですが、実はメーカーが公式に販売しているシロップを使えば、同じ機械でペプシコーラだって作れてしまうのです。

「加工食品は悪!」思考を極端に突き詰めてしまうと、実際には悪くないものまで、いくつも排除してしまうことになりかねません。冷凍の野菜は生のものと同様に健康的だし、冷凍のほうが栄養価が高い場合もあります。牧場でのびのび育った牛から牛乳を搾ったって、流通の前には加工されてしまいますが、それにはちゃんと理由があるのです。栄養学的には、瓶詰めのパスタソースや、できあいのローストチキンを避けなくてはならない明白な理由はありません。アメリカでは卵白だけを牛乳みたいにパック詰めしたものが売られていますが、それだって問題ありません。

「でも、それって加工食品の中でも健康的なものに限った話でしょ? トゥインキーはどうなの? ドリトスマクドナルドやハングリーマンは?」そんな反論が聞こえてきそうです。

自分にとっての「これだけはダメ」を決めて、残りは許容する

上に名前を挙げたようなジャンクフードを避けている人は、きっと何か理由があるのでしょう。糖類や「化学物質」がたくさん含まれているからとか(化学物質については、記事の後半で触れます)、個包装あたりのカロリーが高いとか、脂質が多いとか。しかし、高度に加工された食品は一切口にしないと決めつける前に、ちょっと時間をとって考えてみましょう。あなたの健康上の目標に照らして、本当に避けるべきなのは何ですか?

加工食品の問題としてよく挙げられるものを以下にまとめ、それぞれにどう対応すれば良いかを書き出してみました。

    加工食品には、糖類が多く含まれる:それが身体に良くないのは、割とはっきりしています。チョコバーやカップケーキは言うにおよばず、パンやパスタソースのような、身体に悪くなさそうな食品にだって、糖類は含まれます。とは言え、ラベルを注意深く読めば、摂取を避けるのは簡単です。アメリカでは、栄養成分表示に糖類の項目を設けることが義務づけられています(日本では「炭水化物」の総量の表示が義務で、それを「糖質」「食物繊維」に分けるのは任意です)。今のところは、ラベルの「糖類」の項目を確認するしかありませんが、アメリカ食品医薬品局(FDA)は現在、その下位区分として「添加糖類」の項目を新たに設けようとしています。

    塩分が多く含まれる:これはほとんどの加工食品に当てはまります。私たちが食生活で摂取する塩分の大部分は、高度に加工された食品に由来していて、調理中や盛りつけ後に加える塩分の量を上回ります。特に塩分が多く含まれるのは、加工肉や外食です。どういうわけか、私のまわりには「炭酸のジュース(soda)には塩分(sodium)が大量に含まれている」と信じている人が多いのですが、これは事実に反します。塩分の含有量が知りたければ、ラベルの栄養成分表示の「ナトリウム」の項目を読めばわかります。けれども、食塩感受性高血圧の人でもないかぎり、塩分はそこまで身体に悪いものでもありません。

    脂質が多く含まれる:脂っこいスナック菓子や揚げ物、外食メニューの大部分は、確かにその通りです。でも、脂質は必ずしも悪いものではありません。満腹感が得られるし、おそらく糖類に比べれば身体への悪影響は少ないと考えられています。アメリカでは「脂質」も栄養成分表示への記載が義務づけられていて、下位区分として「飽和脂肪酸」「トランス脂肪酸」の内訳を示すことになっています(日本では「トランス脂肪酸」は任意表示)。飽和脂肪酸は身体に悪くないとされていますが、トランス脂肪酸はあらゆる観点から問題視されています。とは言え、アメリカでは、今や加工食品からもトランス脂肪酸の追放が急速に進んでいます。

    食後に眠気を誘う:加工食品の中でも、白砂糖や精白小麦粉など、精製された炭水化物を多く含むものに当てはまります。たとえば、トゥイズラーとかプレッツェルなどですね。でも、ポテトチップスみたいに脂質も多く含むものなら、それらのおかげで消化がゆっくりになるので、少しは眠気が起きにくくなります。

    中毒性がある:これについてはたぶん、ラベルを見てもわかりません。メーカーはお金を儲けたいので、購入者がリピーターになってくれるよう、いろいろな手を使います。袋を開けたらすぐ食べられるスナック菓子やチョコバーには、悪魔の仕業かと思うほど、よく考えて作られているものがあります。脂質たっぷり、糖類たっぷりの合わせ技は基本で、たいていは塩分もそれなりの量が加えられています。これに当てはまる商品名は、すぐにいくつも思い浮かべられると思います。要するに、自宅のゴミ箱にいつも空き袋が捨ててある、あの商品の名前を挙げれば良いのですから。

    「化学物質」が多く含まれる:当たり前です。あらゆるものは化学物質でできています。たとえば、バナナはこれだけの「化学物質」でできています。確かに、一部の加工食品は原材料のリストがやたらに長くて、その中には舌を噛みそうな長たらしい名前のものもたくさん含まれていますが、名前が小難しいからといってその成分が危険だということにはなりません。保存料として使われることの多い「アスコルビン酸」や「トコフェロール」は、ラベルで名前を見ても実態がよくわからないかもしれませんが、それぞれ「ビタミンC」と「ビタミンE」を専門的に言い表したものにすぎません。どちらも抗酸化作用があって、あなたの身体にとっても、食品の保存のためにも有益なのです。着色料、調味料、保存料などは、必ずしもすべてが悪いものというわけではありません。かつて論争を引き起こした成分も、そのほとんどはおそらく安全だと考えられています。「それでも、注意したほうが良い成分はあるでしょ?」と気になる方は、米NPOの公益科学センター(CSPI)による、こちらのリストをどうぞ。

    地域経済や環境に悪影響がある:自分の応援したい生産者から食品を買うことを、英語圏では「フォークで投票する(vote with your fork)」と言います。大企業の製品は買いたくない、チェーン店よりも地元のパン屋さんにお金を落としたいと思うなら、その姿勢を貫きましょう。また別の立場として、加工食品はポリ袋やビニールで過剰包装されているからとか、原材料の仕入れから工場での生産、小売店への配送までの各段階で相当の二酸化炭素を排出しているからといった理由で、環境に優しくないと考える人もいます。どういう立場であれ、ここは分けて考えたほうが良いでしょう。作り手が利益ばかり追求していようが、資源をムダ遣いしていようが、できあがった食品が絶対に身体に悪いということにはなりません。

こうしたことを踏まえて初めて、食料品店で買い物をする際に(ファストフードのメニューを選ぶときに、かもしれませんが)、避けたほうが良い商品があるとしたら何か、をしっかり考えられるようになります。糖類を控えているのなら、甘味料としてアガベシロップを使った、見るからに健康的なフルーツジュースを選ぶしかないけれど、豚皮の揚げ物はスナック代わりにいくら食べてもOK、という選択もできるわけです。ああいうのが好きならば、ですけどね。

難しい選択に備える

こうして作戦の大枠が決まれば、あとはどう実践していくかを考えるだけです。たとえば、ときどきこんな状況になりませんか? 仕事中にお腹が空いて、手近で食べ物を調達するにはスナック菓子の自販機しかない。以前なら、自販機の中のものは何もかも身体に悪いと決めつけて食べるのを我慢していたかもしれません。あるいは観念してスニッカーズに手を出してしまって、罪悪感に苛まれるとか。でもこれからは、自販機の商品のどれを買うかを決める指針ができたわけです。

たとえば糖類を控えている人なら、自販機のお菓子ではミックスナッツなどが良い選択ということになります。脂質の含有量は多いですけどね。同様に、ガソリンスタンドで売られている軽食から選ぶなら、クラッカーとハムやチーズがセットになったランチャブルズは、高度に加工された食品ではあるけれど、タンパク質が摂取できるぶん、食後の眠気を誘発しにくいので、ポップターツよりはマシ、ということになります。

もちろん、加工食品なんて一切買う必要のない食生活がベストには違いありません。だからって、すべての食事をイチから自炊できる人なんて、どれだけいるでしょうか? そんなわけで、この記事で取り上げた「加工食品の中でも割と健康的なもの」が役に立つのです。たとえば、できあいのローストチキンとか。冷凍のミートボールと瓶詰めのパスタソースがあれば、あっという間にスパゲッティが晩ご飯にできるし、余ったぶんは明日のランチになりますよね。

毎回の食事をイチから自炊できるのなら、それは素晴らしいことです。食材の生産過程だって、気にしたほうが良いのでしょう。でも、みんながみんな、そんな時間の余裕があるわけではありません。もちろん、人類の歴史を振り返れば、そうしていた時代もありました。主婦や農夫にとって、それは仕事の一部でした。でも今や、食事をイチから自炊するというのは、むしろ趣味の領域です。そうできるのなら素敵だけれど、「誰もがしなくてはならないこと」ではありません。私たちは加工食品の満ち溢れた世界に生きています。注意深くよく考えたうえでその恩恵を受けるのは、決して悪いことではないのです。
Beth Skwarecki(原文/訳:江藤千夏/ガリレオ)

グルテンフリーはコンビニ飯でも実践できる。


数年前より、女性誌を中心に特集されてきた「グルテンフリー・ダイエット」。昨年はテニス界のトップに君臨するノバク・ジョコビッチ選手の食事法が話題になり、男性にも注目されるようになってきました。
グルテンとは、小麦粉製品に含まれるタンパク質の一種。主に小腸に悪影響を及ぼす可能性が指摘されており、日本でも一部の医療機関で「グルテンフリー」の考え方に沿った食事法が推奨されるようになってきました。
腸は「第二の脳」と言われるくらい、私たちの身体機能の根幹を支える重要な存在です。もしあなたが、以下に挙げるような慢性的な不調を感じているなら、これらの食事法を取り入れてみてください。
吸収、代謝、排泄などの機能が狂うと…
健康維持のために、普段から白い小麦粉を控え、有機小麦や全粒粉を摂るようにしているという方が増えていますね。しかし、ことグルテンに関して言えば、残念ながらどんな種類の小麦類にも含まれています。
小麦類には「グリアジン」と「グルテニン」という2種類のタンパク質が含まれていますが、これらを水でこねると「グルテン」という成分に変わります。パ ン、麺類、菓子類など、このグルテンを含んだ小麦粉製品を食べた後は、小腸の細胞粘膜が緩み、炎症を起こしやすくなるので、ほかの栄養素の吸収や代謝、老 廃物の排泄などの機能が狂ってきます。
そのため、慢性的な便秘や下痢、イライラ、頭痛、自己免疫疾患、副腎疲労、アレルギー症状などを引き起こします。

病院に行くほどではないけれど、いつもイライラする、集中力が続かない、なんとなくだるい、花粉症などのアレルギーに罹りやすい……。そういった慢性的な不調があるビジネスパーソンは、グルテンの影響を疑ってみるのもいいかもしれません。
グルテンフリー・ダイエット」と題した書籍やレシピ本も登場していますが、グルテンフリーとは、基本的にいつもの食生活から小麦粉製品をカットすること です。欧米では、グルテンフリー食材のコーナーを設置しているスーパーや、グルテンを使用しているかどうかをメニューに明記するレストランなどが、すでに 当たり前になってきているようです。
自分への影響度を測る、手っ取り早い策は?
とはいえ、グルテンはすべての人に悪影響を及ぼすわけではありません。ご自分への影響度をきちんと把握するためには、医療機関などで血液検査・遺伝子検査をすることも出来ますが、保険が適用されないため高額になりがちなのが難点です。
そこで手軽に影響度を知りたい方は、2~3週間実際に「グルテンフリー」を試してみて、その結果を検証するのがいいでしょう。
具体的なやり方は、まず2~3週間小麦粉製品の摂取を完全に止めて、そのあと再び摂取を開始するのです。いったん体調が改善したのち、小麦粉製品を再度食 すとまたなんらかの不調が襲ってくるという場合は、「グルテン過敏症」や「グルテン不耐症」である可能性が考えられます。
小腸は食べ物を消化吸収する大切な器官です。ここに支障が出ると、たとえ体にいいと言われているものをたくさん食べても、その栄養は体に行きわたらず、ただの老廃物と化します。目の前の不調だけではなく、ひいてはメタボのリスクが高まることにもつながるでしょう。
グルテンフリーを外食やいつものコンビニ飯で実践するのは難しいことかもしれませんが、視点を変えると、選択肢はいくらでもあります。
人間は舌の表面に「味蕾(みらい)」という小さな器官を一万個も備えており、それらで食べ物の味を感じますが、成人になると味の好みは定着してくるので、主食となる小麦粉製品が米や大豆粉に変わっても、味に極端な変化がなければストレスなく実践できるでしょう。

〈みわ子流、グルテンフリーを実現するコンビニメニュー〉
●麺類
・ラーメンが好きな方は、しばらく中華麺系のメニューを避け、お米由来の麺が使われているビーフンやフォーにチェンジしてみましょう。カップ麺コーナーでは春雨やくずきり、こんにゃく麺の商品も登場しています。
・うどんが好きな方は蕎麦(なるべく十割蕎麦)に変えてみましょう。うどんのような食感を楽しめる豆腐麺、こんにゃく麺も探せます。
・イタリアンではパスタではなくリゾットを。トマト系やクリーム系など、味付けの基本が似ていると「ガマン」と感じずに済むはずです。
●パン類
・大豆粉と小麦以外の雑穀で作られたブランパンは種類も豊富。米粉パンを探したり、サンドイッチやバーガーがお好きな方は、ライスバーガーや、洋食系の具の入ったおむすびを選んでみましょう。
●菓子類
・大豆粉をベースとしたクッキーやシリアルバー製品は種類豊富にそろっています。
・小麦粉の入っていないスイーツは、プリン、卵白が原料のマカロンやマシュマロ、ゼリー、ヨーグルト、ムース、チョコレート、大福や団子など餅系の和菓 子、あんみつ、わらびもち、ポテトチップス、おかき、煎餅類など。スナック菓子はコーンや米主体のものも多いので、製品の原材料名をチェックしてみましょ う。
●その他
もともと和食派の方は、普段通り、おむすびやお弁当をいただけば、主食に関しては問題ありません。天ぷらやフライ、から揚げは衣に小麦粉が含まれるので、焼き魚やグリル、煮物のおかずを選ぶようにしましょう。
小麦粉製品には魅力的な食品がたくさんありますが、もし何かの不調に悩まれているのなら、まずは2~3週間だけでもグルテンフリーを試してみてください。ご自分の体の「盲点」がわかるかもしれません。

「女性活躍推進法」は女性を追いつめる両刃の剣? - 朝生容子 (キャリアカウンセラー)

1か月ほど前のNHK小野アナウンサーの「子供がいない我々は次世代の捨て石になる」発言や、「#保育園落ちたの私だ」という匿名のブログをきっかけとした一連の動きなど、今の日本で、女性が子供を産んで働く厳しさが話題になることが続いている。男女雇用機会均等法から30年余り、働く女性の環境は、当時と本質的には変わっていないように思える。
昨年成立した女性活躍推進法の施行も間近に迫り、一見、働く女性に追い風が吹いているように見える。しかし同法は、はたして本当の意味で女性が活躍できる社会を作り出すことにつながるのだろうか?均等法成立当時、女性が活躍できる社会が到来すると期待し、達成感以上に失望することが多かった均等法第一世代として、自らの経験をふまえて考えてみたい。
■企業人としてのキャリア拡充期と重なる出産適齢期
女性が働きながら子供を持つ難しさの原因の一つは、出産適齢期と企業人としてのキャリアの成長期とが重なってしまうということだ。平成25年度の厚生労働白書によると、女性の第一子平均出産年齢は30.4歳。大学卒を想定すると、入社7~8年目の仕事も覚え組織のメカニズムもわかってくる年代にあたる。担当職務の責任も増加し、後輩や部下の指導も任されることでマネジメント力の基礎を身につける時期でもある。
捨て石発言が話題になった小野アナウンサーは48歳。均等法第一世代にあたる。捨て石発言のあった番組では「20代、30代の頃はそれ(出産)どころではなかった」「50歳ぐらいになったら産めばよいのかと思っていた」と語っている。
ためしてガッテン」や「鶴瓶の家族に乾杯」など、後に彼女のキャリアを代表する番組に抜擢されたのが入社して6年目。さらにその7年後には、年末の紅白の司会を担当することになる。20代の後半から30代、着々と実績をあげたその陰には、彼女自身の並々ならぬ努力があったことだろう。一方で、結婚や出産については、自身が語る通り、じっくり向き合う余裕がなかったろうと想像できる。
■データに見る仕事と子供の両立の難しさ
小野アナウンサーと同世代の総合職女性は、独身であったり子供を持たなかったりといった人が多い。平成16年度に内閣府男女共同参画局が行った調査結果を紹介しよう。昭和61年~平成2年に総合職として採用され、かつ、調査時に就業中の女性に対して行ったもので、均等法第一世代総合職女性が、結婚、出産に関してどんな意識をもち、どんな選択をしてきたかがうかがえる。
対象となった女性は91名。大卒とすると、調査当時齢は40歳~36歳のアラフォーにあたる。既婚者が46名(50.5%)、未婚者が38名(41.8%)。子供の有無については、子供がいないものが64名と、70.3%を占める。さらに「仕事を継続できた理由として最も重要だったこと」という問いに対する答えを見てみよう。既婚者は「夫の協力・理解」(32.6%)を第一位にあげ、次に「子供がいなかった」(17.4%)と回答している。未婚者は「独身であったこと」(50.5%)が突出している。
これらの数値から、仕事を続けるには、子供や結婚がマイナス要因となると考えていた均等法第一世代女性が多かったことがうかがえる。
さらに、「仕事を継続する上で最も大変だったこと」として、「ロールモデルの不在」が、既婚者の第2位、未婚者の第1位に挙げられており、参考とする女性の先輩がいないなか、総合職としての自らのキャリアを模索している様子もうかがえる。
■周囲の善意が与えるプレッシャー
私にも子供はいない。やはり「子供どころではない」と感じてきたからだが、私の場合は、上司からの言葉にも影響を受けた。27歳で結婚した際、上司から言われたのは「子供はもう少し先にしてくれ」というものだった。結婚に先立ち、初めて主査(係長相当)という役職についたばかりだった。だから上司の言葉は、まず役職の責任を果たすのが先だと命じられたと解釈した。
転職した際には、転職先の上司が、自分の妻が転職直後に妊娠して産休・育休をとったことをあげ「(会社員として)ありえないよね」と語ったのを聞いて、暗に私にもしばらくは子供を持つなと言っていると感じた。
私は彼らのことを糾弾しようとしているわけではない。彼らが私にかけた言葉は、私の今後のキャリアに配慮しての言葉だった。役職に就いたばかり、あるいは転職したばかりの実績がないうちに、もし長期の休みをとったら、その後、ブランク期間の遅れを取り戻すのは難しいと警告してくれたのだ。ましてや主査になった時は、年上の男性ばかりの職場であり、年若い女性を登用することに反対の声もあったと聞いている。ここで育休をとったら、せっかく自分を登用してくれた上司たちにも迷惑がかかる。子供どころではない、がんばらなければ…そんな風に感じていた。
■後輩への責任からの重圧
均等法第一世代が仕事の優先順位を高くしてきたのは、自らのキャリアのためだけではない。企業の基幹業務を担う女性のパイオニアとして、後輩たちへの責任を強く感じていたという理由もある。
昨年の3月に放映された「クローズアップ現代」で、均等法から30年後の第一世代のその後を取り上げていた(いまを生きる女性たち 次に続くあなたへ ~“均等法第一世代”からのメッセージ~)。そこで登場した総合職女性も「(女性も仕事を)続けられるよっていうことを、(次の世代に)知らせてあげる役割は私たちにはあるのかな」「続けられる、続けたらいいことがあるよというのは、私たちが持っているミッションかもしれない」と語っていた。
こうした思いは素晴らしいが、当事者の気負いにもつながる。私は「初の女性」「たった一人の女性」として配属されたことも多く、自分の評価が女性全体の評価とされてしまう気がしていた。自分が仕事に頑張らなければ、女性の後輩たちに申し訳がない…そんな思いから、なかなか子供を持つ決意が固まらなかった。
■必要なのは子育て後の女性活躍の「実例」
多くの会社で、いま「女性活躍推進法」で定められた、女性登用のための行動計画を練っていることだろう。その中で、パイオニアとして女性を任用する施策はないだろうか?たとえば、「初めて女性をあるポジションに任用すること」や「初めて女性だけの商品開発プロジェクトを発足させる」といったことだ。
「男性並みに」働くことが是とされる企業文化が変わらないままでは、女性のパイオニア的な役割を担った人たちは、成果を出すために「男性」並に働くことを選ばざるを得なくなるのではないか。つまり、パイオニアとしての責任感から、結婚や出産を先送りすることがまた起こりうるのではないかと懸念しているのは考えすぎだろうか。
そんな事態を回避するために何が必要なのか?
1つは「活躍する女性のパイオニア」としての重圧を必要以上に感じさせないよう、上司の言動に関する教育など、環境整備を行うことだ。「男性並み」に働くことを前提にしていることを示唆するような上司の言動は慎まなければならない。
さらに、重要なのは「子育て後に活躍している女性」の存在だ。女性たちが不安なのは、出産・育児によって、仕事上のキャリアが「途切れて」しまうと考えているからだ。そしてその原因は、子育ての時期を乗り越えてビジネスの第一線で活躍している先輩女性の実例があまりにも少ないことによる。
そこで、子育て等でいったんビジネスの第一線を離れた女性を、再び企業で「活躍」できるような場を積極的に設けることを提案したい。私がキャリアの相談を受けた方の中には、子育てがひと段落したので、もう一度、思いっきり仕事をしたいとおっしゃる方も少なくない。退職する前に、活躍されていた方も多く、その力をビジネスで活かしていないのはもったいない話だ。
やる気ある女性を発掘し任用すれば、若い女性たちにとってはブランクの後にも再チャレンジの可能性を感じることができる。また若いうちにチャレンジングな経験をしておくことで、短期的にはブランクやペースダウンが生じたとしても、長い目で見れば再び力を発揮する機会もあると考えられれば、難度の高い新たな挑戦にも挑みやすくなるだろう。
均等法第一世代と異なるのは、企業社会での経験豊富な女性達が圧倒的に増えていることだ。均等法から30年の最大の成果は、そうした女性が蓄積されてきたことだと思う。彼女たちを、これからの活躍が期待される若い女性達のロールモデルとし、多様で柔軟なキャリアの在り方を示すことは、過度なプレッシャーを緩和することになる。
もちろん、再登用にあたっては、今のビジネス環境にキャッチアップできるかの精査や、ブランクやマミートラックで生じた経験不足を補う教育などの措置は必要だろう。しかし、彼女たちが活躍することで、若い世代の女性たちの活躍も促されるとしたら、それは必要な投資である。
女性活躍推進の数値目標の選択項目には、実際に「再チャレンジ」の項目も設けられている。ぜひ選択し、行動計画の中に盛り込むことを検討いただきたい。

30歳から筋肉は1%ずつ減少する!? 老けないための「筋トレ」とは?

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◆筋力トレで鍛える5つの筋肉
「男性が7年から9年、女性が12年から16年」。この数字、なんだと思いますか。寝たきりの平均年数です。長寿は本来喜ぶべきですが、寝たきりでこの年数は本人も家族もなかなかしんどいもの。なぜ寝たきりになってしまうのかというと、筋力の衰えが原因です。だれもが歳をとる中で、不自由なく体を動かし、長寿を喜べるように、筋トレをしましょう。いまと未来はつながっています。その未来を変え、いまを変えるのが筋トレだと本書はいいます。
『筋トレをする人が10年後、20年後になっても老けない46の理由』のタイトルにあるように、本書には、筋トレでいつまでも健康と若さを保っている人(たとえばマドンナ、高倉健郷ひろみなど)のエピソードを交えて、なぜ筋トレが必要か、最低限どのような筋トレをどのようすればいいのか、効果はどのくらいで見えるのか、といった筋肉と筋トレに関する知恵が46つまっています。
まずは、本書の核心ともいえる内容をご紹介します。
「高齢になったときに転倒骨折しないようにいまから鍛えておくべき筋肉トップ5とは?」
それは、大腰筋(背骨と左右の大腿骨をつないでいる筋肉)、大腿四頭筋(太ももの内側にある人体のなかでもっとも大きく分厚い筋肉)、腹筋(なかでも正しい姿勢を保ち、おなかのセンターラインにある腹直筋)。ふくらはぎの筋肉(ふくらはぎは血液を上半身へ戻すポンプの役割)、上肢の筋肉(この筋肉が衰えると、とっさのときに身を守ることができません)の5つです。
◆筋トレメニューは、量より継続が大事
以上の筋肉を、どのように鍛えればいいのか、それが本書の次の核心となってきます。そのポイントは、最低限の努力で、最大の効果を引き出す「1日たった5分」の筋トレ。具体的には「ストレッチ筋トレ」と「ちょいマジ筋トレ」の2種類で、「片ひざ倒しストレッチ」「両足伸ばしストレッチ」「スクワット」「腹筋」などがその中身(やり方は図解されています)。筋トレの効果を得るには継続が一番大事といいます。これらのメニューは、簡単にできるように「なるべく軽め、少なめ」に設定され、量より継続にウエイトがおかれています。筋トレというと、つらい、厳しいイメージ。これなら、だれにでもできそうな内容です。
30代以降、なんの対策も講じなければ筋肉は1%ずつ減少していくといいます。しかし、筋力は、トレーニングによって減った分を取り戻し、さらに増やすこともできます。それは、健康、若さ、美しさを取り戻すことと同意です。本書では、なにもしていない人を寝たきり予備軍と呼んでいます。毎日仕事に追われ、一日中パソコンの前に座り、動くといったらトイレに立つことと会社と家の往復ぐらい。寝たきり予備群とは、そのような人たちです。人生80年。終わりの数年間、寝たきりにならないよう、今から筋トレをはじめましょう。(著者は筑波大学大学院人間総合科学研究科教授。スポーツ医学の分野で、サルコペニア肥満、中高年の筋力トレーニング、健康政策などを研究)。文=月足 渡

ずっと通院しても症状改善しない...「金づる」リピーター患者を引き止めるトンデモ病院!

ずっと通院しても症状改善しない...「金づる」リピーター患者を引き止めるトンデモ病院!
現在通院している個人医院でなかなか症状が改善しないと、「別の医者に変えたい」と思う方は多いのではないだろうか。また、医者に不信感を抱いたときも、そう思う方は多いだろう。
では、こういう場合はどうすればよいのか。多くの方は、黙ってほかの病院に行くはずだが、症状が重かったり、個人医院では処置できない疾患の場合は、現在かかっている医院の医者に大病院宛の「紹介状」を書いてもらうことになる。
ところが、この紹介状を渋る、あるいは断る医者がいる。悪質なのは、「うちではあなたの病気の処置は設備がないのでできない。大病院に行ってください」と言うにもかかわらず、「紹介状をお願いします」と言うと、「厚かましい」と断る医者がいることだ。
さらに悪質なのは、慢性疾患で定期的に通っている患者さんに対して、「あなたの病気はうちで十分にケアできます。紹介状を持って大病院に行かれてもやることは同じですよ」などと言う医者がいることだ。たとえば、軽度の糖尿病や高血圧などは小さな病院でも診られる。また、こうした患者さんは病院にとってみればリピーター患者なので、収入源として他に行かれると困るので引き止めようとするのだ。
筆者は病院経営をしていたことがあるので、「患者を離さない」というのが病院経営のイロハであることを知っている。しかし、そう申し出る患者さんに対しては、プライマリーケアの原則からして、「紹介状を書いてあげてもっとよい専門医のところに行ってもらおう、そのほうが患者さんのためだ」というのが、医者のあるべき姿だと思っている。そうしないで引き止めていると、何かあったときは大変なことになるからだ。
ところが、こんな意見もある。
「医者に限らず、自分が面倒をみているお客さんが同業他者のところへ行くというのを喜ぶ人間はいません。とくに不信感からそう言われたら、誰でも嫌がります。その場合、紹介状を書くということは自分を否定されることになる」
これは正しい意見だろうか。
医療は患者さんのためにあるのであって、医者のためにあるわけでない。また、医者というのは、その見識、キャリア、技術、人格など、個々人みな違うのだから、患者はそのなかから自分に合った医者を選べる権利を持っているはずだ。
したがって、どんなケースでも遠慮せず、堂々と紹介状を書いてもらうことを申し出るべきである。その場合、紹介先が決まっていなくとも構わない。
●紹介状を書くのは診療行為
医者が書く紹介状というのは、一般的な意味での単なる「紹介状」ではない。正確には、「診療情報提供書」と呼ばれるもので、医者がほかの医者へ患者を紹介する際に発行する書類のことで、患者さんの症状や診断・治療など、これまでの診療の総括と紹介の目的などを記載するものだ。
医者が紹介状を作成する場合、次の2つのケースがある。
(1)患者が依頼したとき
(2)医師が他の病院で診てもらったほうが適切だと判断したとき
つまり、医者が紹介状を断る理由はないのだ。しかも、紹介状を書くということはひとつの診療行為であり、医者には1枚につきしかるべき診療報酬の収益が入る。患者はその費用を負担することになっている。親切で書くわけではないのだ。
そもそも、紹介状を渋る、書かないという医者は、患者を「金ヅル」としか思っていないか、プライドばかりが高いか、あるいは世間知らずの引きこもり医者が多い。
ただ、患者をお客として捉えている医者のなかにも、親切で話をよく聞いてくれる医者もいる。患者は「私の先生はいいお医者さん」と思うわけだが、それが表面的なポーズだったりすることもあるので、見分けるのは難しい。
ただ、紹介状を積極的に書いていてくれる医者ほど、いい医者であることは間違いないだろう。筆者も医者なので、各方面から頼まれて年間数多くの紹介状を書く。その場合、その病院で受けた検査、たとえば、内視鏡検査、心電図、血液検査のデータなどを一緒に出してもらうことを勧めている。
(文=富家孝/医師、ラ・クイリマ代表取締役